心身教育研究所

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フォーカシング

フォーカシング・サンガ

感じるままを語ってよいのです。ここでは決して否定されません。
やさしい態度で自分自身に触れ、メンバーから理解的に受容されるとき、
あなたは力強さや幸福感を感じるでしょう。

フォーカシングとは

 

 生きている限り私たちはいろんな状況に遭遇し、良いことであれ悪いことであれ、そのそれぞれにいろんな気持ちや感情を持ちます。そんなとき普通はあれこれ考えたり、感情に振り回されたり、あるいは気をそらそうとしたりするものですが、フォーカシングを学んだ人は、その状況に関するからだの感じに気づこうとします。

 ある状況には必ずそれに特有のからだの感じが伴うものです。それを感じ取るには30秒くらいは時間がかかるかもしれません。たとえば、昨日友人が何気なくつぶやいた言葉について、からだの感じを探ってみると「のどに棘が刺さったような感じ」が感じられたとします。状況に特有のこの感じをフォーカシング用語で「フェルトセンス(felt sense)」といいます。「意味感覚」とここでは訳しておきます。

 フェルトセンスは暗黙の意味を多く含んでいます(暗在性)。私たちはその意味がすでに明らかになっている言葉を使って概念を作り、状況をその概念で捉えようとするものです。先の友人のつぶやきについては「きっと彼女は私のことを避けているんだ」と考え、「避けられている自分」という概念から感情や思考が展開したりするのが常です。しかし「のどの棘が刺さったような」感じというのは、もう少し違った意味を匂わせています。

 フォーカシングは、フェルトセンスが含み持つ暗黙の意味を明らかにしていく”ちょっとした”技術です。最初は少し練習が必要ですが、態度として身につけば、自身のからだの感覚というものが、いかに信頼に足るものであるかということがわかってきます。私たちのからだの感覚は、決して「わがまま」を満たすだけの欲求の感覚ではないのです。むしろ、環境全体の中で一つの生命としての自分が、適応的に生きていくための深遠な知恵を示してくれていることがわかってきます。

​フォーカシングの技術

 さて、フェルトセンスを感じられるようになったら(簡単にできる人もいますし、なかなかできない人もいます)、フォーカシングの”ちょっとした”技術を学んでいきます。

 一つ目は、フェルトセンスを善悪の判断を交えずに眺めるという技術です。言いかえれば「あるがまま」に見るということです。状況をあるがままに見ることは、悟った人にしかできない技かもしれませんが、状況に対するフェルトセンスをあるがままに見ることはそう難しくはありません。この技術を媒介させることで、やがてどんな状況をもあるがままに眺められるようになることでしょう。

 二つ目は、フェルトセンスをできるだけ正確に表現するという技術です。フェルトセンスは不思議なもので、正確な表現に近づくたびにその感じを変えてきます。ちょっといい感じに変わるのです。それによって表現が核心に近づいたことがわかります。先ほどの「のどに棘が刺さったような」感じに対して、「この表現でピッタリだろうか」と問いかけてみると、「のどを爪で引っ掻かれた」の方がよりピッタリな感じだったとします。そう表現してみると、のどの感じは内側から外側に変化していることに気づきます。さらに「抱き上げた猫が私ののどを軽く爪で引っ掻いた」と表現するとさらにぴったり感が増して、ちょっと愛おしい感じも出てきました。この時点で、友人のつぶやきに関する最初の概念は大きく変化する可能性が出てきたわけです。

 三つ目は、フェルトセンスの「甘え」を理解・受容する技術です。フェルトセンスは主体である<私>に「わかってもらいたい、受容してもらいたい」という暗黙の欲求を共通して持っています。ですから、先に説明した1,2の技術で、かなりその欲求は満たされてはいます。最後にフェルトセンスを擬人化して、<その子>が最も満足する一言を投げかけてあげたり、心の中で抱きしめるなどの態度を取ってあげます。先ほどの例では、「のどの引っ掻かれた感じ」に対して「大丈夫だよ」と言ってあげると良いかもしれません。また猫は友だちのフェルトセンスの象徴として現れているようですので、「不快な扱いをしてごめんね」と言ってあげると良いでしょう。

 これでフォーカシングは終了ですが、ここで取り上げた状況に対して、今後どういう具体的な対応をするのが良いのか、考えておくのはとても大事なことです。先の例では、「友だちにもっと親切に関わる」と決めておけば、のどの感じが教えてくれたことが活かされるでしょう。最後に今のからだ全体の感じを確かめ、すっきり感があれば終わりにしますし、まだ何か残っている感じがあれば、その感じに対して「また今度ね」と言ってあげます。このようにフォーカシングではフェルトセンスを大切な友人として扱う技術を学ぶのです。

​ フェルトセンスはある状況を思うときに出てきますが、逆に、フェルトセンスの方が先に感じられて、それに対応する状況が一体に何なのか、よくわからないこともしばしばあります。そんなときも、フェルトセンスを大切な友人として、そのそばに寄り添うようにしていると、ふと「ああ、あのことだな」とわかるものです。

 フォーカシングは一人でもできなくはないですが、訓練を積んだ聴き手(リスナー)がいてくれると、非常にやりやすくなります。またリスナーの練習をすることが、自らのフォーカシングのスキルアップにつながります。こうした練習は確実に自分自身の人生の質を高めますし、カウンセラー、教師、介護士など他者援助を仕事とする人や子育て中の親さんにとって、力強い羅針盤になることでしょう。

 
フォーカシング・サンガ

 

 心を高め合う仲間の集まりのことをサンスクリット語で「サンガ」といいます。「僧」の語源でもあります。

 「フォーカシング・サンガ」はフォーカシングを実践的に身に付ける場であり、同時に今抱えていることを仲間に聴いてもらうことで楽になることを目指す場です。

 通常は5~10人で円座して語り合います。誰かが語るときに、他の1人がフォーカシングのリスナーとして応答します。他のメンバーも皆傾聴します。誰かのフォーカシングに即した語りを聴くことで他のメンバーも自己への気づきをさらに深めることができます。こうしたやり取りを3時間も続けているうちに参加者同士で信頼感を深め合うことができます。

 フォーカシング・サンガでは写真のようなぬいぐるみ(シャベラー)が大活躍します。シャベラーは持てばその人に語る権利があるということであり、またシャベラーを持つことで気持ちが和らぎ、気持ちを喋りやすくもなります。また語り手の中のいろいろな気持ちをシャベラーたちが象徴してくれることもあります。

 

安全・安心ルール

 

 フォーカシング・サンガには以下の「安全・安心ルール」があります。始まりの時点で皆で確認します。

  1. 守秘義務:この場で聴いた話を他所で話しません。

  2. 尊重:どんな気持ちや感情も尊重されます。

  3. 非暴力:変化や気づきを強要しません。その人の自発的な変化が尊重されます。

 

コメント(ギフト)

 

 誰かの語りが終わった時点で、メンバーはその語りを聴いて心に湧きあがることを語り手に伝えるようにします。これは語り手に対するギフトです。このとき安全・安心ルールを念頭に置きます。これによって、語り手はさらなる気づきや安心感を得ることがあります。

 

 

フォーカシング・サンガ参加者の感想
 
語り手としての感想
 
  • 開きなおることができた。自分勝手ではなく、今の私はこうなんだからそれでいいと思えるようになった。不安も少なくなった。自分を責めることが少なくなっているような気がする。人の気分にびくびくすることも少なくなった。自分を大事にしたいと思えるようになった。

  • 忙しいと心を無くすといわれるが、「忙しいな」と思ったり、感じたりしたときこそ、自分のフィーリングに耳、身体を傾けて自覚する。そしてその「感じ」が自分にどんな影響を与えているかを知る。それが良い影響ならもっと大きくすればいいし、それが悪い影響なら排除するか考え方を変えてもいいかもしれない。

  • 自分に対して(特に気持ち)今までより敏感になりました。また敏感になろうと心掛けるようになりました。「あー、いらいらしてるみたいだな。何でかな」とイライラを何かと言動に出してしまう前に気づいてイライラの原因を見つけたら納得してすっきりしたりして、フォーカシングの効果を日常生活で実感しています。特に子どもに対するときに今までに比べて落ちついて接することができるようになった気がします。(自分の感情に左右されなくなってきた)

  • 自分を認めること。どんな自分も受け入れること。今まで自分自身を否定し続けていました。自分の存在価値なんてまるでないと思っていました。

  • 自分を自分で肯定的に捉えられるようになったこと。ネガティブな気持ちにはまりそうになったとき、もう一人の自分が気づいて、そんな自分を客観的に見たり、そんな自分に肯定的な声がけをしたりできるようになった。他人に対しても肯定的な見方や声がけがしやすくなったこと。

  • 自分が今まで抱えている悩みを話せたことでずいぶん心が軽くなった。自分の考え方が変化したというよりも、より強く自分を肯定するようになった。

 
リスナー体験からの感想

 

  • つい「こうしたら」「あーしたら」と言ってしまいがちだったけど、まずは話を受け止めることが以前より多少できてきました。嫌な人に気持ち的に振り回されなくなりました。

  • 会話で「受容する」ことから始めることは、相手とのコミュニケーションをとりやすくなったと思います。

 
グループ体験からの感想

 

  • 感じたことを伝えてみると、みんな同じようなことに悩み生活していることに気づき、声に出すことでまた違った感情が生まれてくるんだなーとつくづく感じました。

  • “受け入れられる”感覚がこれほどまでに心地よいものなのかと驚くと共に、体のそこから、自分はここにいてもよいのだという安心感でいっぱいになりました。こんな経験は初めてです。

  • 様々な年代の方と交流でき、皆さん多様な問題やそれに対しての向き合い方をされていることが印象深かったです。

  • ギフトによって、日常生活の中でさりげなくフォーカシング的かかわり方ができるようになることがわかった。

  • 自分とは違った形や表現方法でプロセスが進んでいく様子を目の当たりにすることができた。